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第七章・4
「そんなにサクサク決めちゃって、いいのか? ヤクザの情夫になるんだぞ?」
「僕はヤクザの情夫になるんじゃなくって、士郎さんの恋人になるんです」
気持ちは本当にありがたいし、できれば私もそうしたい。
だけど……。
「きれいな秀実を、裏社会へ入れたくない気持ちも強いんだよ」
「士郎さん」
「今日、事務所でちょっと揉めてね。AVの仕事のことなんだけど、業績が落ちてるんだ。そこで……」
秀実を俳優に使いたい、と言う話が出た。
そう、士郎はあえて正直に告白した。
(君が断れば、秀実。やっぱり君は私と一緒には、いられない。棲む世界が、違うんだ)
「やります、僕」
「え!?」
「士郎さんが、それで困ってるんなら、僕やります!」
「いや、あの、その、ちょっと」
秀実は、真摯な目をしていた。
(これで、士郎さんへの恩返しができるのなら!)
「待ってくれ。確かに昨夜、私たちは身体の関係を持ったよ? でも、AVとなると、勝手が違う。むやみやたらとエロエロしいんだ!」
それに、と士郎は慌てていた。
「秀実、以前言ったよね。『僕なら、恋人がいるならAVの仕事はしません』って!」
「相手役が恋人なら、話は別です」
秀実の、強い決意だった。
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