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第八章 撮影開始

 士郎の希望通り、秀実のデビュー作はノーマルで行くことになった。  背中に刺青のあるヤクザとの絡みである時点で、すでにアブノーマルではあるのだが。 「そういえば、坊。いつから水流のことを『秀実くん』から『秀実』に替えなさったんで?」 「二週間前くらいからかな」 「坊、まさか」  その、まさか、さ。  そう言って、士郎は真田に照れ笑いを見せた。  士郎と秀実が結ばれてから、二週間が経っていた。 「……いいんですか? 彼を撮影に使っても」 「使おうと言い出したのは、真田だよ?」  しかし、と真田は声をひそめた。 「組長の情夫となっちゃあ、話は別です」 「本人が一生懸命にがんばってるんだ。台本も、もう覚えちゃったよ」  うむぅ、と真田は唸った。 「場所の撮影許可も取ったし、本人との契約も交わした。いまさら止める、なんて言えないよ」  士郎は、腰に手を当てて伸ばした。  本当に、秀実はよく頑張ってる。  台本を覚えただけではない。  この二週間で、士郎の指導のもと様々なテクニックをその身体に叩き込んだ。  フェラもそうだし、体位も十種以上覚えた。 『士郎さん、これでいいですか?』  熟れたまなざしで訊いてくる秀実の艶は、日を追うごとに増していく。 「撮影で本気になっちゃうかもだけど、そこは大目に見てくれ」 「初めての撮りですからね。仕方のないことです」 「いや、私の方が、だよ」 「は!?」  笑いながら、士郎は真田から離れていった。

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