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第八章・2
「撮影は海、ですよね」
「そう。砂浜にシートを敷いて、やる」
士郎は、秀実の初撮影に屋外を使うことにした。
人気のない、シーズン前の海。
海水浴場ではないので、それこそ誰も来ないのだが、事前に撮影許可は取ってある。
これをきちんとやっておかないと、後に検挙される恐れもあるのだ。
あとは、秀実との契約。
真田は、彼を組員にして簡略化したらどうかと勧めたが、士郎は絶対に反対した。
秀実を、これ以上裏社会に染めたくない。
その一心だった。
監督、カメラマン、AD、そして、俳優。
最小限の人数で、海を目指した。
「海、気持ちいいですね」
「そうだなぁ、久しぶりに来たよ」
「お二人とも、呑気なことで」
監督の笑う中、二人は浜辺を歩いたり、水を掛け合ったり。
「おい、あれもちょっと撮っておいて」
監督の命令で、カメラが回る。
レンズが映すのは、どこから見ても幸せそうな恋人たちだった。
「準備、できました!」
ADが陸側から駆けてきて、いよいよ撮影だ。
「秀実、大丈夫か?」
「僕、精一杯やってみます」
秀実の、AVデビューが始まった。
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