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第八章・4

 ラストシーンは、オープニングと同じように二人で仲良くはしゃいだ。  防波堤の上に腰かけ、身を寄せ合う。 「もっと、イチャイチャして!」  監督の声に、士郎は秀実の肩を抱き軽くキスをした。 (士郎さん、不意打ち!)  深い仲になった二人だ。  キスだって、何度もやった。  だが、今は周囲に人がいる。  撮影スタッフとはいえ、人の目があるのだ。 (恥ずかしい……!)  でも、と秀実はうつむいた後、素早く顔を上げてキスのお返しをやっていた。 (ナイス、秀実!)  これなら、どこからみても相思相愛の恋人だ。  士郎は、秀実の機転を喜んだ。  これなら、監督も納得してくれたに違いない! 「はい、カット!」  ふう、と息をつく秀実に、監督はご機嫌な笑顔だ。 「いいねぇ、秀実くん。俳優の素質、充分だよ」 「ありがとうございます」  褒められちゃったな、と士郎が頭を撫でてくれた。  しかし、秀実の心臓はドキドキと高鳴っていた。  次は、いよいよ絡みのシーンなのだ。  

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