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第八章・5
海から砂浜を抜け、陸側の芝生に歩いて行くと、大判のバスタオルが敷いてある。
「この上で、二人絡んでもらいます」
じゃあ、キスからね、と監督はいとも簡単に言ってのける。
「秀実、平気?」
「大丈夫です」
では、とカメラが回り始め、二人は濃厚なキスを交わした。
唾液で濡れた音を響かせ、昂る息遣いまでていねいに吐いた。
キスをする間もカメラアングルは細かく替わり、様々な角度から様子がうかがえるようにしている。
いよいよ、視聴者相手の勝負が始まったのだ。
どんなに綺麗に撮ってあっても、俳優の演技が優れていても、興奮できなければ意味がない。
士郎の言った、『むやみやたらとエロエロしい』AVを作らなければならないのだ。
「カット! 次、服を脱ぐシーン行きます。秀実くん、焦り過ぎないでね」
「はい」
キスを終えたところから始めて、二人は手早く服を脱いだ。
(もう我慢できない、早くヤりたい! ……って感じで。だったな)
秀実は発情して士郎と結ばれた、初めての時のことを思い出していた。
(あの時みたいに。ああ、早く士郎さんと……!)
急ぎ過ぎてボトムを脱ぐときに、体がよろめいてしまった。
(しまった!)
すると、士郎が自然な動きで、秀実を支えてくれた。
監督は、ストップをかけない。
(ありがとうございます、士郎さん)
秀実はボトムの下のサーフパンツも脱いで全裸になり、士郎はスポーツビキニ一つになった。
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