62 / 153

第十章 士郎のジレンマ

「売り上げは好調です!」  組事務所での経営会議で、AV営業担当の組員が嬉しそうに報告した。 「すでに、水流での二作目を、の声も上がっております」  場が盛り上がる中、士郎だけは複雑な思いだった。 (できればもう、秀実は出演させたくないんだけどな)  それに、二作目となると……。 「次は、凌辱もの、ですな。坊」  ほら、来た! 「真田、純愛もので売り出した秀実を、二作目で汚れ役にするのはどうかなぁ」  何をおっしゃる、と真田は渋い顔だ。 「そのギャップで、さらに売るんですよ!」  これで満足してはいけない、と言うのだ。 「じゃあ、一応秀実に訊いてみるよ。凌辱ものでも大丈夫か。彼が嫌だと言えば、やめるからな」  そこで監督を務める組員が、さらにキツイことを言ってきた。 「近藤さん、凌辱撮るなら、相手役は多胡でいきたいと思ってるんですが」 「え!?」 「純愛してた近藤さんが、いきなり秀実くんをレイプしたら変でしょう?」 「ぅあ~……」  さらに、マズいことになった!  士郎は再び重い気持ちを抱えて、帰宅した。

ともだちにシェアしよう!