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第十章 士郎のジレンマ
「売り上げは好調です!」
組事務所での経営会議で、AV営業担当の組員が嬉しそうに報告した。
「すでに、水流での二作目を、の声も上がっております」
場が盛り上がる中、士郎だけは複雑な思いだった。
(できればもう、秀実は出演させたくないんだけどな)
それに、二作目となると……。
「次は、凌辱もの、ですな。坊」
ほら、来た!
「真田、純愛もので売り出した秀実を、二作目で汚れ役にするのはどうかなぁ」
何をおっしゃる、と真田は渋い顔だ。
「そのギャップで、さらに売るんですよ!」
これで満足してはいけない、と言うのだ。
「じゃあ、一応秀実に訊いてみるよ。凌辱ものでも大丈夫か。彼が嫌だと言えば、やめるからな」
そこで監督を務める組員が、さらにキツイことを言ってきた。
「近藤さん、凌辱撮るなら、相手役は多胡でいきたいと思ってるんですが」
「え!?」
「純愛してた近藤さんが、いきなり秀実くんをレイプしたら変でしょう?」
「ぅあ~……」
さらに、マズいことになった!
士郎は再び重い気持ちを抱えて、帰宅した。
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