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第十章・3

 撮影が近づくにつれて、士郎は落ち着かなくなっていった。 「途中でイヤだ、って言って辞めてもいいんだからな?」 「そんな無責任なこと、できません」 「私が撮影に立ち会わなくても、いいのか?」 「……恥ずかしいです」  それに。 「僕が多胡さんと絡んでるところ、士郎さんに見られたくありません」  ああ、と士郎は頭を抱えた。  解ってる。  これは、単なるビジネス。  でも、だけど! 「秀実が多胡にヤられるなんて、イヤだ~ッ!」 「士郎さん、いいかげん諦めてください」  これでは、どっちが大人か解らない。  士郎は、こっそり秀実の台本を読んだことがある。  そこには、凌辱エロ満載の小道具や、セリフが満ちていた。  監督に電話して、すぐに小道具のうちのディルドやバイブは止めさせた。 『解りました。じゃあ、玩具責めは無しでいきます』 「そうしてくれ!」 『三作目の、調教もので使いましょう!』 「バカ言うな!」  そんな士郎の悪あがきはあったが、二作目の撮影は無事に終わり、DVDも販売された。

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