64 / 153
第十章・3
撮影が近づくにつれて、士郎は落ち着かなくなっていった。
「途中でイヤだ、って言って辞めてもいいんだからな?」
「そんな無責任なこと、できません」
「私が撮影に立ち会わなくても、いいのか?」
「……恥ずかしいです」
それに。
「僕が多胡さんと絡んでるところ、士郎さんに見られたくありません」
ああ、と士郎は頭を抱えた。
解ってる。
これは、単なるビジネス。
でも、だけど!
「秀実が多胡にヤられるなんて、イヤだ~ッ!」
「士郎さん、いいかげん諦めてください」
これでは、どっちが大人か解らない。
士郎は、こっそり秀実の台本を読んだことがある。
そこには、凌辱エロ満載の小道具や、セリフが満ちていた。
監督に電話して、すぐに小道具のうちのディルドやバイブは止めさせた。
『解りました。じゃあ、玩具責めは無しでいきます』
「そうしてくれ!」
『三作目の、調教もので使いましょう!』
「バカ言うな!」
そんな士郎の悪あがきはあったが、二作目の撮影は無事に終わり、DVDも販売された。
ともだちにシェアしよう!