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第十章・6

「そ、そうだったな。擬似精子か。そうだよな」  現場に長年いた自分なら、すぐに解ったはずだ。  それを忘れてしまうほど、士郎はのぼせ上ってしまっていた。 「どうします? まだ、続き観ますか?」 「いや、やめておこう。心臓に悪い」  動画を止めて、士郎はソファに大きくもたれた。  そんな彼に、秀実はいたずらっぽく擦り寄った。 「ね、士郎さん。イケナイ遊び、しませんか?」 「何だよ、それ」  さっと秀実が出して見せたのは、おもちゃの手錠だった。 「これで、凌辱プレイしませんか?」 「ひ、秀実!?」  実は、と秀実は手錠をかちゃかちゃさせながら言った。 「多胡さんが、この手錠くださったんです。気持ちの整理がつかないなら、士郎さんと凌辱プレイするといい、って」  僕、撮影の時は夢中で他のこと考える余裕がなかったんですけど、と秀実はうなだれた。 「時間が経つにつれて、士郎さんを裏切った気持ちがどんどん膨らんで。それで」 「ああ、いいよ。大丈夫、泣かなくてもいい」  これはビジネスだ、フィクションなんだ、と士郎は秀実を慰めた。 「よく撮れてた。秀実は何にも悪くはないんだから」 「士郎さん……」 「でも、凌辱プレイはやろう!」 「士郎さん!」

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