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第十章・7

 士郎はバスルームに湯気をたっぷり浮かせた。  これはもちろん、秀実が寒くないようにだ。  彼は全裸にしておきながら、自分はスーツを着けている。  手錠を掛けて、準備は万端だ。 「士郎さん、どうしてバスルームで?」 「それはもちろん、秀実の可愛い顔に……」  顔射するため、とは恥ずかしくて言えなかった。  顔を汚しても、シャワーですぐに流せるからだ、とは言えなかった。  恥ずかしくて!  それでも秀実は、士郎の意図が解ったようだ。  にっこり笑うと、まずはキスをねだった。 「凌辱ものだぞ? 甘いキスなんか、してあげないんだぞ?」 「してくれなければ、プレイさせてあげません」  参ったな、と士郎は秀実にキスをした。  恋人同士の、優しいキス。 「凌辱プレイなんか、初めてだよ。私は」 「僕がリードしてあげますよ」  全く、参った。秀実には。  俳優という仕事を通して、確実に成長した彼を、士郎は喜んだ。

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