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第十一章・4
士郎は温かいシャワーの湯で、秀実の顔を洗ってやった。
「熱くないか? 平気?」
「気持ちいいですよ」
ついでに秀実の阻喪も、流して清めた。
「でも、士郎さん」
「何?」
「もったいなくないですか? 今身につけてるもの、全部ダメになっちゃったでしょう」
いかにも凌辱ものらしく見せようと、全ていつもの高級品でキメていたのだ。
トラウザーズに、ベルト、靴下に、革靴。
「靴下くらいなら、生き残るかも」
士郎の言葉に秀実は、笑った。
でもね、と下半身を軽くしながら士郎は秀実に微笑んだ。
「秀実とこうやって遊ぶためなら、惜しくなんかないんだよ」
はい、準備完了!
士郎も素裸になり、秀実と一緒にシャワーを使った。
ソープを泡立て、お互いに洗いっこをやった。
バスタブに浸かり、100まで数えた。
幸せだ、と士郎は感じていた。
こんなに幸せで、いいんだろうか。
私は幸せだけど、それは秀実の幸せでもあるんだろうか。
ぼんやりと浮かんだ士郎の不安は、やがて形になっていった。
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