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第十二章 テレビ、恥ずかしい!

 テレビ収録の本番前、秀実はミチルの楽屋を訪れていた。 (どんな人かな。優しい人だといいな)  ノックをし、どうぞ、との声に、ドアを開けた。 「あの、お邪魔してすみません。僕、今日ゲスト出演する、水流 秀実です」 「そう。よろしく」  椅子に掛けたまま振り向いたミチルは、美しかった。 (垢抜けてるなぁ。まさに芸能人って感じ)  秀実は一瞬その姿に見蕩れたが、すぐに手にした花束を差し出した。 「これ、うちの事務所からです」 「ありがとう。そこに置いておいて」  必要最小限の返事に、秀実は思いきって言ってみた。 「うちの事務所の、近藤からです」  そこで初めて、ミチルに表情が現れた。  華やぐ笑顔。  椅子から立って、花束を大切に抱えた。 「士郎さんから? ありがとう」 (士郎さん、って名前で呼んでる!?)  秀実の胸の内が、途端にざわめいた。  やはり、二人は深い仲だったんだろうか。

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