79 / 153
第十二章・4
ふんどしを締めた秀実は、いよいよテレビ番組の収録に入った。
きらびやかな飾りの付いた席に着き、まずは自己紹介だ。
「秀実です。AV俳優やってます」
「秀実くんの作品は、この二本です!」
司会者は、DVDのパッケージを持っている。
「凌辱ものとかやったみたいだけど、怖くなかった?」
「あ、スタッフさんがみんな優しい方ばかりでしたから」
「どうして、AVの道に入ったのかな?」
「ある人に、恩返しがしたくて。それで」
(それは、士郎さんなんだね。秀実くん)
秀実から少し離れた席で、ミチルは唇を噛んだ。
彼は一体、士郎さんの何なのだろう。
今の、現在の士郎さんを知っている、秀実くん。
ミチルもまた、胸の内をざわつかせていた。
ともだちにシェアしよう!