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第十三章・2
「ミチルさんは、どうして俳優になられたんですか?」
突然の秀実からの質問に、ミチルは面食らったが、そこは表に出さず淡々と答えた。
「お金が欲しかったんだ。贅沢に暮らせるだけの、お金が」
僕は貧しい家庭に育ってね、とミチルは付け加えた。
「もう、貧乏はこりごり。AVで稼いで名前が売れたから、今度はドラマにも出演するんだ。共演は、里崎 俊也(さとざき しゅんや)」
里崎 俊也と言えば、今人気のある若手俳優だ。
秀実は、素直に驚いた。
「すごい。そんな有名な俳優さんと、共演されるんですね」
「それはそうと、君はどうなの? なぜAV俳優になったの?」
「それは……、ある人に、恩返しがしたくて。それで」
「ある人、って誰?」
「僕の事務所の、近藤さんです」
やっぱり、とミチルの胸は震えた。
この子は、秀実くんはなぜ士郎さんと出会ったんだろう。
「どうして士郎さんが恩人なの?」
「実は僕、事務所が経営するカフェで、無銭飲食しちゃったんです」
秀実は、士郎が自分を付き人にすることで救ってくれた、とその時の模様を説明した。
「士郎さんが、君を付き人に」
一目見ただけで、軽く会話しただけで、どうして?
たしかに、士郎さんは誰とでもすぐに仲良くなれる人だけど。
この子を、なぜ、ずっと自分の傍に置いておくことにしたのかな?
ミチルの胸は、どんどん乱れていった。
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