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第十三章・6

 士郎のプジョーに乗り込んできた秀実を待っていたのは、温かなキスだった。 「ん、ぅん……。士郎さん……」 「お疲れ様。緊張したろう? 大丈夫だった?」 「はい。ミチルさんが、お花ありがとう、っておっしゃってました」 「どうだった? ミチルくんの印象は」 「すごくカッコ良かったです。綺麗で、垢抜けてて。芸能人、って感じがしました」  そう、と士郎はエンジンを掛けながら言った。 「でもね、秀実も立派な芸能人だから。AV俳優だからって、卑屈になることはないよ」 「ありがとうございます」  士郎は車を郊外の高台に止めた。  夕闇の中に見下ろす夜景。  少しずつ明るさを増す街の灯りを、秀実と共に楽しんだ。 「美しいですね」 「そうだね」  そっと肩を抱き、士郎は秀実を車内へといざなった。

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