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第十四章・3

「誰だろう」  邪魔しないで欲しいな、と口を尖らせ発信者を見たが、その瞬間目を見開いた。 「お父さん」 「何?」  秀実の父から、ほぼ半年ぶりに電話がかかって来たのだ。  着信音は、しつこく鳴り続けている。 「秀実、出なきゃ」 「でも。出たくありません」  話すことも、ありません。  そんな秀実に、士郎は優しく言った。 「いつかは乗り越えなきゃならないことだ。逃げちゃダメだ」 「はい」  思いきって、秀実は電話に出た。

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