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第十四章・8
夕食は、季節のメニューを出している日本料理の店に入った。
「アユの塩焼き、か。もう夏なんだな」
「初めてお会いした時は、春でしたね」
早いな、季節が巡るのは。
二人、しみじみとアユを味わった。
食事を軽く摂った後は、展望ラウンジのバーでちょっぴりカクテルを楽しむ。
士郎が、やってみたかった、とご機嫌なシチュエーションだ。
「秀実が20歳でよかったよ。おかげで、一緒にこうして飲める」
「僕、あまり強くありませんよ?」
「酔うほどには、飲ませないさ。この後が待ってるんだから」
その言葉に、秀実は頬を染めた。
酔いのせいだけではない、赤み。
(そういえば、ホテルでエッチするのは初めて)
いや、士郎と旅行することが、まず初めてだ。
そんな秀実の気持ちを察してか、士郎がグラスを軽く掲げた。
「いいね、こういうの。これからも、何度でも旅行しよう」
「はい。喜んで」
グラスを合わせ、乾杯した。
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