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第十四章・9

 士郎は、まるで初めてのように秀実を優しく抱いた。  秀実もそれを充分に悟った様子で、彼が体内から去った後、甘えてその胸に頬を擦り付けた。 「どうだった? 物足りない?」 「いいえ。すごく素敵でした……」  まだ弾む息を抑えながら、秀実は士郎に思いきり甘えた。 (明日は、お父さんと会うんだ。士郎さんは、それを考えて、こんなに優しくしてくれたんだ)  嵐の前の静けさ、かもしれないな。  そんな風に、考えもした。  明日の面談は、思いきり荒れる予感がしていた。 「士郎さん、もう一度だけ抱いてくれますか?」 「いいよ、好きなだけ。秀実がもういい、って言うまで、何度でも」  熱いキスを、交わした。  士郎にも、秀実の不安は解っていた。 (私にできるのは、こうして君を抱いてあげることくらいなんだから)  それで、不安が少しでも和らぐのなら。 「挿れるよ」 「ん、あぁ。は、あぁ、あ……」  すでに柔らかく解れた秀実の中へ、士郎は挿入っていった。  腕で、脚で、しがみついてくる秀実。 「大丈夫。私はここにいるから」 「あ、あぁっ! 士郎、さ、んッ!」  腰を挿れるたび、秀実は士郎に爪を立てた。  竜の荒れ狂う背に、爪立てた。

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