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第十五章・2

「一体全体、どういう経緯で秀実はその、AVなんかに」  そんな邦夫の問いかけに、士郎は淡々と語って聞かせた。  実家からの仕送りが途絶え、生活に困窮したこと。  体を壊して、バイトを辞めざるを得なくなったこと。  アパートも追われ、食うや食わずの生活が続いたこと。  士郎経営するカフェで無銭飲食をし、二人は出会ったこと。 「無銭飲食の件に関しては、後に皿洗いや掃除などで返すつもりでおられたので、お咎めは無しにしました」 「それはどうも。しかし、それがもとで秀実は恥ずかしい仕事をすることに?」 「何度もいいますが、AV俳優は立派な職業の一つです。恥ずかしい事などありません」 「あんたはまだ若い。息子がそんな職業に就いた親の気持ちなど、解らんでしょうな!」 「αの長男を溺愛し、Ωの次男が瘦せ細っている事実を知ろうともしない親にはなりたくありませんね」  邦夫はいきり立ったが、そこに士郎たちのコーヒーが運ばれてきたので、口をつぐんだ。  カップには口をつけずに、秀実は父に訴えた。 「お父さん、僕は無理強いされてこの仕事を選んだんじゃありません。近藤さんには、本当に何から何までお世話になってしまって」  だから、ご恩返しがしたかっただけなんです。  そんな秀実を、邦夫は睨む。  怒りと、蔑みの目で。 (お父さん、やっぱり何にも変わってない)  子どもの頃から浴びせ続けられた、愛のないまなざし。  秀実の心は、殻に閉じこもりかけた。

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