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第十五章・4

「よく言った、秀実くん。これで私も、君に秘密を明かすことができる」 「秘密、ですか?」  実はですね、お父さん。  そして、秀実くん。  勿体ぶって、士郎はその秘密を打ち明けた。 「まだ本決まりではないのですが、映画監督の青原 繁(あおはら しげる)氏から秀実くんに出演の打診が来ています」 「青原 繁!?」  青原といえば、現代を代表する映画監督の一人だ。  国際的な映画祭でも、優秀な賞をいくつも獲っている。 「ま、まさか。青原 繁が秀実なんかを」 「お父さん、まずは『おめでとう』ではないのですか?」  秀実の行く手には、光の道筋が見えた。  これで、おとうさんは僕が俳優になることを許してくれるに違いない!  ところが、邦夫は妙なことを言い出した。  彼は、途端に秀実が惜しくなったのだ。 「そういうことなら、尚のこと親元できちんとした生活をしておかないといけませんな」 「何ですって?」  士郎が、初めて眉を曇らせた。

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