114 / 153

第十六章・8

「秀実、明日は履歴書を書くぞ。青原さんに渡しにいく」 「はい……」 「まぁ、向こうからお誘いが来たんだ。書類選考で落ちることは、まずないな」 「はい……」 「どんな役どころなのかな。秀実に合うキャラクターだと、いいな」 「はい……」  何を言っても、はい、しか言わない秀実だ。  これは少し、苛めすぎたかもしれない。 「もし、オーディションに受かったら。結婚しようか、私たち」 「……」 「眠ってしまったか」  これはやはり、プロポーズはきちんとしなさい、という秀実の心の声なのかな? 「可愛いよ、秀実。心から、愛してる」  すやすやと眠る秀実に、士郎は甘く愛の言葉をささやいた。  自分もいつしか寝入ってしまうまで、ささやき続けた。

ともだちにシェアしよう!