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第十七章 選考試験開始!

「一次選考通過おめでとう、秀美くん!」  AV撮影スタッフの組員たちに、秀実は胴上げされていた。 「わぁあ! あ、ありがとうございます!」  そっと床に下ろしてもらい、秀実はようやく笑顔を見せた。 「これも、皆さんのおかげです」 「いや、秀実くんの演技力の賜物だよ」  スタッフたちはそう言ってくれるが、彼らが自分をしっかり撮ってくれたから、きちんと売り出してくれたからだと、秀実は思っていた。 「本当に、ありがとうございます」  頭を下げる秀実に、士郎は苦笑いだ。 「おいおい。まだ書類選考を通過しただけだぞ。大げさだな」 「そうか。まだ二次、三次が残ってるんだ。秀実くん、気を引き締めて行こう!」 「はい!」 「じゃあ、撮影に行こうか」  何? と士郎は監督に声をかけた。 「撮影? 今から秀実でAV撮るのか?」  そうですよ、と監督は涼しい顔だ。 「稼げるときに稼いでおかなきゃ。秀実くんほどの逸材は、そうそう現れませんからね!」  笑いと共に、スタッフは準備を始めている。  その様子を見ながら、士郎は顎に手を当て考え込んだ。 (確かに、秀実が青原監督の下で成功を納めたら、もうAVどころではなくなる、か)  その後は表舞台に出て、ひっぱりだこの人気俳優になるに違いない。  そうなると。 (近藤組の中にいるのは、彼のためにならないな……) 「近藤さん! どうします? 秀実くんと、絡みますか!?」  監督の声に、士郎は我に返った。

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