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第十七章・2
「今回の秀実くんには、延々ひとりエッチしてもらうんですが。近藤さんが絡みたいのなら、台本変えますよ?」
士郎は、秀実を見た。
赤くなって、こちらをチラ見している。
「秀実がやりたそうだから、混ざろうかな!」
「そうこなくっちゃ!」
楽しいな。
愉快な仲間たちと、和やかな撮影現場。
秀実に、そんな世界をのぞかせてあげられたことを、士郎は心底よかったと感じていた。
(青原監督は、ひどく神経質で厳しい人だと聞いているからな)
素直な秀実なら、ちゃんとついて行けると信じているが、心配でもあった。
撮影は、本来楽しいものなんだと心の底に刻んであげられるなら、何だってやろう。
「で? 私の役は何だ?」
「放課後の教室でひとりエッチしている生徒を見つけて、そのままいただいちゃう変態教師の役です」
「変態教師!?」
どっと笑いが起きた。
秀実まで、笑っている。
仕方が無いな、と士郎も笑った。
「名優・秀実のためなら、変態にでも何でもなってやるさ」
胸に沸いた危惧をしまい込み、士郎も撮影用のバンに乗って出かけた。
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