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第十七章・3

 二次選考は、面接だ。  青原監督を含めた数名の人間がずらりと並んでいる中に、秀実はたった一人で対面していた。 「まずは、水流 秀実くん。君の映画に関する思い入れを、聞かせてくれるかな?」  その中の一人が、こう切り出した。  秀実が口を開きかけたその時、青原がぼそりと言った。 「そんなことは、どうでもいい」 「え? でも……。青原先生?」  青原は鋭いまなざしで秀実を見ながら、指を組んだ。 「君は、撮影現場をどう思う?」  秀実は戸惑って、先に質問した男性の方を見たが、彼はうなずいている。  これは、青原監督の質問に答えろ、ということだろう。  そこで秀実は、素直なところを口にした。 「撮影の現場は、大好きです。楽しいですし、撮影スタッフの皆さんと僕たち俳優とで作る、熱気が心地いいんです」 「そうか。君はAV俳優だが、そのことに負い目を感じたりするか?」 「いいえ。AVでも、一つの作品を、皆で力を合わせて作り上げることに違いはありませんから」 「君がオーディションで受けている役は、娼夫だ。複数の人間と濡れ場を撮ることになるが、心の準備はできているか?」 「大丈夫です」  表情を変えずに、秀実の返事を聞いていた青原だったが、最後に妙なテストをやった。 「椅子から立って、その場で一回廻ってみてくれ」

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