120 / 153

第十七章・6

 士郎のマンションで、秀実は台本を読んで溜息をついた。 「どうでしょう。僕、うまく演技できるでしょうか」 「上手くやろう、なんて思わないことが、秘訣じゃないのか?」  それはそうと、と士郎は秀実にポートワインのグラスを差し出しながら言った。 「ミチルくんも、二次選考通ったらしい。電話があったよ」 「ミチルさんが」  彼の名を聞くと、途端に胸がざわめく秀実だ。 (どうしよう。訊いちゃおうかな、ミチルさんとのこと)  ミチルさんと過去、何かあったんですか?  もしかして、恋人同士だったんですか? 「秀実、もしかして、妬いてくれてる?」 「え!? いえ、いや、そんな!」  でも……。

ともだちにシェアしよう!