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第十七章・7

「でも、気になります。士郎さんと、ミチルさんのこと」  秀実の声は、細かった。  そんな彼に、士郎は心配するな、と。  勘繰らないで欲しい、と答えた。 「ミチルくんと私は、共演者。それ以上でも、それ以下でもないよ」 「ホントですか」 「ただ、ミチルくんから、付き合って欲しい、と言われたことはある。断ったけどね」 「なぜですか?」 「だって、彼氏がいたんだよ? ミチルくんには。二股かけさせるわけには、いかない」 「そうですか……」  それだけだ、と士郎は秀実のグラスに自分のグラスを軽く当てた。 (士郎さんを、信じよう。どっちにしろ、僕には士郎さんしかいないんだから)  秀実は小さく微笑むと、ポートワインを口にした。 「私には、秀実しかいないよ」 「……!」 (僕の心の声、士郎さんに聞こえちゃったのかな!?)  甘いポートがさらに甘くなるような、士郎の言葉だった。

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