123 / 153
第十八章・2
雲一つない、青空。
運命の日は、気持ちよく晴れた。
「私がついて行けるのは、ここまでだ」
試験会場のスタジオに開けたエントランスで、士郎は秀実に告げた。
「本当は、青原監督の隣で観ていたいくらいなんだけどな」
「いいえ。忙しいのに車で送ってくださって、ありがとうございます」
「私は、そこのカフェで待ってるよ。帰りも、送ろう」
「いいんですか?」
「今はノートパソコン一台で、どこででも仕事ができる時代だからな」
そう言って、士郎は手にしたバッグをひょいと掲げて見せた。
にっこり笑った秀実だったが、すぐにその顔は曇った。
「どうした?」
「ここに来て、怖いんです、僕。震えが、止まらないんです」
「それは困ったな」
全く困った秀実だ、と士郎は長い腕で秀実を抱き込んだ。
広いその胸に、抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!