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第十八章・3
「秀実、愛してるぞ」
「士郎さん」
何がどうなろうと、それだけは変わらない。
「だから安心して、全力でぶつかって来い」
「はい」
人気がなければ、キスしたいところだ。
いや、これだけ人が多ければ、キスしても返って目立たないのでは?
そんなけしからんことを士郎が考えていると、胸の中の秀実がもぞりと動いた。
「士郎さん、僕もう行かなきゃ」
「あ? ああ。そうだな」
最後に、士郎は秀実に握手をした。
「健闘を祈る」
「ありがとうございます」
秀実は一度だけ振り向いて、エレベーターに乗って行った。
士郎は、エントランス奥のカフェに陣取り、パソコンを開いた。
コーヒーを頼み、天井を仰いだ。
「大丈夫。秀実なら、うまく行くに決まってる」
注文したコーヒーは、意外においしかった。
「大丈夫。コーヒーが美味いから、きっとうまく行くに決まってる」
秀実だけでなく、士郎もまた緊張していた。
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