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第十八章・4
控室で、一人きりで待たされた秀実。
やがて、若い男がドアを開けて呼んだ。
「水流 秀実くん、試験会場へどうぞ」
「はい」
長い廊下を歩く間中、秀実は士郎を想っていた。
秀実、愛してるぞ。
何がどうなろうと、それだけは変わらない。
だから安心して、全力でぶつかって来い。
士郎の励ましが、胸を温かく浸していた。
(士郎さん。僕、できる限りのことはやります)
試験会場に入ると、そこには青原監督が。
そしてその横には、映画やテレビ、動画でよく見知った男が立っていた。
(道下 玄(みちした げん)だ!)
子役時代から芸能界で育った、大ベテランの俳優だ。
(まさか、台本の『男』って……)
「では、最終選考を始めます。このテストでは、実際の演技力を見せてもらいます」
数名の男女と青原監督、道下の見る前で、秀実は腹をくくった。
(最高の演技をします。士郎さん!)
動いたのは、やはり青原だった。
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