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第十八章・7
「ああ、終わった!」
泣いても笑っても、後は結果待ちだ。
演技は、あれで良かったのかは判らないが、全力を尽くしたのだ。
秀実の足取りは、軽かった。
エントランスに降り、カフェで待つ士郎の元へ、走った。
「士郎さん!」
は、と顔を上げた士郎は、秀実の明るい顔を見た。
(あの様子だと、いい演技ができたみたいだな)
「お疲れさま。頑張ったんだな?」
「驚きましたけど、頑張りました!」
「驚いた?」
そこで秀実は、台本に無いシーンをテストされたと打ち明けた。
「道下 玄さんがいらしてですね。死んだふりされました」
死んだ男に対して、どういう演技をしたか。
「僕、士郎さんが死んじゃったらどうするか、って考えて。そしたら、自然と涙が出て」
「そうか。私でも、秀実の役に立てたんだな」
「何もかも、士郎さんのおかげです」
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