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第十九章 喜びの涙

「合格おめでとう、秀美くん!」  AV撮影スタッフの組員たちに、秀実は胴上げされていた。 「ありがとうございます!」  そっと床に下ろしてもらい、秀実はくしゃくしゃの泣き笑いだ。 「皆さんのおかげです」 「秀実くんの実力だよ、自信持って!」  カフェの組員たちも、笑顔で秀実たちを見ている。  秀実は、青原監督のオーディションで、見事に合格したのだ。 「食い逃げくんが、大化けしましたね」 「そうだな。昨日のことのように思い出されるよ」  カウンターで、真田と士郎が微笑み合っている。  痩せ細って、ボロボロだった秀実。  今では、はち切れんばかりの魅力に溢れている。  輝いている。 「坊、これからは水流を独り占めできませんな」 「ファンが大勢できるんだろうなぁ」  コーヒーのおかわりを士郎に出しながら、真田は顔を引き締めた。 「それで、さっきの話ですが。坊は、それでもよろしいんですか?」 「逆に訊きたいよ。真田は、了承してくれるのか?」 「私は、坊に従います」  そして、どんなことがあっても、坊に。 「いや、近藤さんについて行きます」 「ありがとう、真田。親父が聞いたら、泣いて喜ぶよ」  先代から近藤組に仕える、古参の真田だ。  彼が賛同してくれるなら、この話は運びやすい。  士郎は、ある決意を固めていた。

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