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第十九章・2

「近藤さん! 買い出しに行って来てもいいですか!?」 「カフェは臨時休業にして、パーっとお祝いしましょう!」 「大賛成だ。よろしく頼む」  撮影班の組員たちは、どっと買い出しに出掛け、カフェの組員は『臨時休業』の看板を表に出そうと外へ出た。  そこへ、体をねじ込むように店内に入って来た客がいる。 「お客様、まことに申し訳ございませんが、今から臨時休業をいただきますので……」 「秀実くん、いる?」  客は、ミチルだった。 「ミチルさん」 「ちょっと、訊きたいことがあって」  ミチルは、ずかずかと店内に入り、窓際の席に掛けた。  つられて、秀実もその席に着き、マスターはコーヒーを二つ淹れ始めた。 「合格、おめでとう」 「あ、ありがとうございます」  でも……。 「どうして、それを?」  まだ、キャスト決定は内密のはずだ。  ミチルはなぜ、秀実の合格を知っているのか。 「僕の事務所は、大手だからね。そういう裏情報もキャッチしやすい、ってこと」  それより、とミチルは身を乗り出した。 「どんな手を使って、合格をもぎ取ったのさ。もしかして、青原さんと寝た?」 「そんなこと、しません」  挑発的なミチルに、秀実は困ってしまった。

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