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第十九章・4

「秀実くんは、どんなテストだったの?」 「ミチルさんと同じです。僕も、士郎さんと思って泣きました。号泣、じゃないけど。声を殺して泣きました」  薄情だな、とミチルは秀実を睨みつけた。 「士郎さんと付き合ってるんだろう? だのに、しくしく泣くだけなんて」  僕なら、わんわん盛大に泣いてあげる、とミチルは士郎の腕に自分の腕を絡めた。 「おいおい、二人して散々俺を殺してくれるなよ」  士郎はそっとミチルの腕をほどいた。 「ミチルくん、じきに撮影班の組員たちが戻って来る。抜けた君を良く思ってない連中もいるから、もう出た方がいい」 「でも、士郎さんが守ってくれるんでしょう?」  どこまでも食えないミチルに、士郎は眉を寄せた。 「ミチルくん。私はね、秀実のことを大切に思っているんだ。だから、あまり困らせないでくれ」  君も、恋人がいるんだろう?  だったら、その人を大切にしなさい。  そう、士郎はミチルに説いた。 「もし士郎さんが僕と付き合ってくれるなら、今すぐその人とは別れるよ」 「私は君とは付き合えない。いや、付き合わない。なぜなら」  なぜなら。 「私は、秀実を心から愛しているから」

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