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第十九章・7

 お祝いパーティを終え、士郎と秀実はマンションに戻っていた。 「まさか、ビールを頭からかけられるなんて」 「後始末が大変だ、って真田が真っ赤になってたな」  二人でバスタイムを楽しみながら、そんな話をしていた。 「士郎さん、背中流してあげます」 「ありがとう」  秀実は、刺青の竜をていねいに擦った。  始めは、怖かった。  でも今では、僕を守ってくれてるみたいな、士郎さんの竜。  シャワーで泡を流してしまうと、士郎は秀実の手首を優しく握った。 「おいで、秀実」 「ここで、今から、ですか?」  にっこりうなずく士郎だ。  彼に身体を預けながら、秀実は日中の言葉を反芻していた。 『私は君とは付き合えない。いや、付き合わない。なぜなら私は、秀実を心から愛しているから』  嬉しくて、涙が出そうだ。  いや、本当に涙が出てきた。  背面座位の体位で、良かった。  泣き顔を、見られなくて済む。 「うっ、く。はぁ、あんッ! あ、ぁん、士郎さんッ!」  後ろから抱きかかえられ、激しく突かれながら、秀実は泣いた。  喜びにあふれた、きれいな涙だった。

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