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第二十章・2

 定例会が終わるまで、秀実は士郎お勧めのピザショップでマルゲリータを頬張りながら待っていた。 「今日は遅くなるかも、って士郎さん言ってたけど」  定例会へ赴く顔つきも、いつもより引き締まっていた。 「やっぱり、ミチルさんが言ったことと関係あるのかな」 『僕ね、今、仁道会の兼田と付き合ってるんだ。彼に頼んで、こんな弱小事務所、潰してもらうことだってできるんだから!』  あんな捨て台詞を残して去って行った、ミチル。  あれきり士郎に彼から電話があったとは聞かないが、仁道会はどう動いているのか。 「でも、弱小事務所、だなんて」  ひどいことを言うなあ、と秀実は思う。  確かに構成人数は少ないし、羽振りがいいともいえない近藤組だ。  それでも、組員は皆、秀実に優しかった。  特に撮影班の人たち。  共に一つの作品を作り上げる、いわば同士だ。  明るく元気で、熱意にあふれた彼らが、ヤクザだということを時々すっかり忘れてしまうこともある。  自分が悪く言われるのは構わない。  でも、近藤組の皆を悪しざまに貶めることは、やめて欲しい。  秀実は、そんな風に考えていた。

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