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第二十章・3

 食後のエスプレッソを飲んでいるところに、士郎が現れた。 「遅くなったな。すまない」 「大丈夫です」  それより。 「士郎さん、少し疲れてませんか? 何か注文しましょうか」 「いや、腹は減っていないから。どちらかと言えば、早く帰りたいな。くつろぎたい」  では、と秀実が会計を済ませようとすると、すでに士郎が支払い済みだ。 「ごめんなさい、ご馳走になっちゃって」 「遅くなったお詫びだよ」  プジョーに乗り込み、士郎と秀実はマンションへ向かった。 「おや?」  車を地下駐車場へ入れようとすると、その出入り口をふさぐようにロールスロイスが停まっている。  車からは、士郎のプジョーを待っていたように二人の人影が降りてきた。 「兼田さん。それから、ミチルくん」  ぼそりと士郎がつぶやき、秀実は緊張で身を固くした。  

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