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第二十章・4
「降りよう、秀実」
「士郎さん、危険じゃないんですよね?」
大丈夫、と士郎は笑顔だ。
「別に取って食われやしないさ。兼田さんも、話の解らない人じゃない」
士郎はエンジンを止めて車を降り、秀実も後に続いた。
「こんばんは、兼田さん。どういった御用で?」
「すまないな。どうしても今夜中にケリをつけたい、ってコイツがわがまま言うから」
兼田は、隣のミチルの肩を抱いた。
ミチルは、くすくす笑っていた。
笑いながら、嬉しそうに言った。
「士郎さんを、僕のペットにしてあげる。だから、近藤組をちょうだい」
あんまりなミチルの発言に、秀実は目を見張り、兼田は愉快に笑った。
士郎は、顔色ひとつ変えなかった。
「聞いての通りだ。近藤さん、あんたの組、傘下に収めたいんだが、どうだ?」
「兼田さんも大変ですね。ミチルくんは扱いにくいでしょう?」
「そこがまぁ、可愛いんだがね」
「ミチルくん、私は君のペットにはならないよ。そして」
そして。
「そして、兼田さん。せっかくのお誘いですが、近藤組は仁道会の配下にはなりません」
「万が一、抗争になっても、か?」
「抗争にはなりません。なぜなら」
なぜなら。
「なぜなら、近藤組は看板を下ろします。廃業しますから」
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