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ケモ耳SS 4 雪や、コンコン

 ――やるよ。二枚もらったから。  英次がくれた「美女と野獣」の映画鑑賞券。クリスマス時期、ロマンチックなラブストーリーってことで、テレビコマーシャルで頻繁に流れていたその映画に興味はなかったけど。ほら、クリスマスは彼氏彼女とデートをする日って感じだからさ。  ――行く! 英次! それずっと見たかったんだ! 一緒に行ってよ!  俺は慌てて立ち上がって、くれた本人を映画に誘ったんだ。誘われた英次はこっちを見て目を丸くしてから、クスッと笑った。  ――なんだ、お前。彼女とか、まだいねぇのかよ。  そして、そう言って笑いながら、俺の頭をガシガシと大きな掌で撫でてくれたんだ。  いないよ。いるわけがない。だって、好きな人が今、目の前にいるのに、どうして彼女なんか。そんなのいらない。欲しいのは、欲しい人は、今、目の前にいる。そう胸の内で必死に叫んで、何も知らない英次に対して、勝手にむくれてたっけ。  すぐそこにいるのに。  クリスマスに一緒にいてくれるのに。  ――俺の甥っ子はまだまだお子様だな。  そう言ってからかう叔父に怒ってた。あんたのことが好きなんだって、言いたくて、でも言えないのが悔しくて。  ちょっと懐かしいよ。  想いが届かないけれど、手を伸ばせば触れることができるもどかしさっていうのがさ。  今は、想いは届いて通い合っているのに、手を伸ばしても触れることができないほど遠いから。 「雪、もっと降れば……ぃぃ、のに」  ワガママかな。前なら、我慢できたかもしれないけど、今は切なくて。 「雪合戦でもする気か?」  びっくりした。まだ明け方、英次はまだベッドの中で熟睡しているとばかり。時差ぼけもあるから、すごくよく寝てた英次が、いつの間にかすぐ後ろにいた。 「部屋の中があったかいからって、そんな格好でいると風邪引くぞ」  今、俺は上だけ着て、下は何も身につけていない。たくさん啼いたから喉が渇いて水を取りに行った帰り、ふと窓の外を見て、足を止めたんだ。 「雪、降ってきたのか」 「……うん」  風邪なら、英次の方がひきそうじゃんか。下だけ履いて、上半身裸で、ほら寒そうに今、ちょっとだけ身震いした。窓枠に手を置いて、その胸に閉じ込められている俺には、英次のわずかな震えすらわかってしまう。 「どうりで寒いわけだ。……お前はあったかいな」 「俺で暖とってる?」  耳元に触れる低く柔らかい笑い声にさっきまで英次がいたお腹の辺りがキュンとした。  野獣の格好をした英次にソファで抱かれて、そんで、ベッドへと担いで運ばれた俺は、野獣の仮装をやめた英次にもっとたくさん可愛がられ、トロトロになるまで愛された。牙だけは取らずに、何度も何度も俺の身体にその牙を突き立てられた。痛覚さえ快楽にすり替わってさ。最後、うなじを噛まれただけで、イっちゃった。  俺の叔父はズルいんだ。こんなふうに俺のことまたやらしい身体にしておいて、もう明日には帰っちゃうんだから。どんなお金の使い方してんだよ。親父がいたら怒られそうだ。飛行機代の跳ね上がるこの時期に遥々海を越えて、一泊したら帰っちゃうなんて。  ズルいよ。 「あぁ、あったかい……」  こんなちょっとじゃやだって、思っちゃうじゃんか。 「英次」 「今日のバレエ公演までに止むといいな」  雪、もっとたくさん降ればいいのにって、思っちゃうじゃん。チケット取るのが難しい有名バレエダンサーとコラボのクラシックコンサート、瀬古さんとかにも協力してもらって、英次がプレゼントしてくれたのに。  だって、雪がたんまり降ったら、英次を乗せた飛行機だって飛べないだろ? 「ン、英次」  昨日何度も爪を立てちゃったせいで、引っ掻き傷がたくさんついた逞しい首を引き寄せて、もう牙もない唇にキスをした。 「ん……っ」  唇を割り開いてってねだって、舌を差し込んで、滑らかな歯をなぞる。仕事の時には後ろに撫で付けている髪をぐしゃぐしゃに掻き乱して、何度も何度も、口付けて。 「ね、もう一回、しちゃ、ダメ?」  明日帰っちゃったら、またしばらく会えないから、声で我慢するしかないから、俺の中にたくさん沁み込ませてよ。英次の全部、次会える時まで我慢できるように。 「ダメなわけあるか」  雪がどんどん降り積もる外を向いて、背後から抱き締められながら、尻に当たる硬いものに、身体がゾクリと鳥肌を立てる。 「ぁっ、んっ……」  何も履いていない下半身、尻の割れ目に擦り付けられる布越しの熱源に震えるほど感じた。  数回上下に尻の狭間を擦られただけで、シャツの下で自分のペニスがむくむくと勃ち上がる。乳首が、昨日、牙にたくさんいじめられた乳首がシャツの下からでもわかるくらいに勃起した。 「あぁぁっン、や、ンっ……気持ち、イイ」  たまらなくて、硬くなった粒を指で摘まれて、爪でカリカリ引っ掛かれて、ペニスが気持ち良さそうに涎を零して、床を濡らす。 「やぁっン、乳首っ」 「こら、凪、声、聞かせろ」 「あぁぁぁっ」  口元を手の甲で押さえたら、その手を捕まえられ、冷たいガラス窓に押し付けられる。指が絡まって、掌が重なって、ガラスはとても冷たいのに、英次の掌が温かくて、嬉しかった。英次の体温を感じられて嬉しくて、その体温を、この人を身体の中でもっと感じたいって、きゅんっと孔の口が欲しがる。 「あ……」  その孔に指先が触れただけで腰が揺れちゃうくらい疼いてる。そこを埋めて欲しくてたまらない。 「昨日、散々、したからな」 「あぁぁぁぁっ」  柔らかいと呟かれながら、その柔い中を硬いもので貫かれて、甘い悲鳴を上げた。 「あっンっ……英次のっ」 「お前の中、やらしい」 「あ、あぁっ、気持ちイイっ、とこ、当たってるっ」  腰を狂おしく押し付けてくる英次にキスがしたくて、背中を捻って振り返った。 「ン、好きっ……英次っ」  ぐちゅ、ずちゅって、やらしい音を立てて、自分からも腰を使って、英次のペニスにしゃぶりつく。ずぷりと突き刺さる太さがたまらなくて、お腹の底のところを切なく締め付けながら、攻め立てられる度に悦がって啼いた。 「あ、あンっ……英次、えいじっ」 「っ」 「中、に、欲しいよっ、英次、中に、また出してっ」  外は雪で真っ白。もっと積もればいい。だって、もっと英次とこうしてたい。 「あ、イくっ、英次! イっちゃうっ」 「っ、凪」  切なくて、愛しくてたまらない人を繋がった場所で、重なる掌で、首を引き寄せる手で強く捕まえながら。 「あ、あ、あぁぁっンっ……っ、ん、っ!」  中に沁み込む英次の体液に歓喜して、愛しい手の中に甘えるように擦り寄って、大胆に射精した。

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