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第7話
「ねえ、この間のお兄さん、何者?」
やっぱりそうくるよね。俺でもそうする。
「だから、親戚のおに……」
「あんなイケメン、笹目の親戚筋から出てこないでしょ」
「……ですよね」
「とうとう貸しを返してもらうときがきたね」
坂下がニヤリと笑う。もう嫌な予感しかしないけれど。
「もしかして……彼氏?」
「えっ! いやいやいや……」
「違うの? なんか笹目、あの人のことすごく好きそうに見えたから。気分悪くしたら謝る、ごめんね」
「ちがっ、そうじゃなくて! 俺は坂下の言うとおり、あの人のこと大好きなんだけど……」
「……よかった、勘違いじゃなくて」
「年上のせいか俺のこと子ども扱いというか、本気に取り合ってくれないというか……まだそこまでいけてないと思う」
「そうかな? あの人も結構笹目のこと好きに見えたけど。まあでも子ども扱いがムカつくのはわかる」
あー俺って正道さんのこと、誰かに話したかったんだな。年上の彼氏がいるという坂下が共感してくれるもんだから、つい口が滑らかになってしまった。
「関係性に慎重になるのは、いざというとき、笹目に負担をかけないようにじゃないかな」
やっぱりそうくるか。結局そうなるのか?
「私の叔母ってね、すっごい年下の男の人とつきあってるけど、プロポーズも断って結婚しないの。再婚てのもあるらしいけど、一番は相手に逃げ道をつくってあげてるんだって。正道さんもそうなんじゃない?」
「俺は逃げ道なんかいらないのにな」
「私もそういう考え好きじゃないけど、でもまあ叔母さんがそういうふうに考えるのもわかるよ」
「そうなの?」
「ダメになったとき傷つきたくないじゃん、誰だって。だから自分のためでもあるんじゃない?」
「そっか……それなら仕方ないよね」
「立派な社会人の大人がさ、うんと年下の高校生にぞっこんですって認めるのって、やっぱり怖いと思う」
「そんなもんかなあ」
「私の彼氏はまだ社会人ではないけど、それでもやっぱ、同じようなことは言ってたし」
もしかしたら正道も、そんなふうに考えたことがあるのだろうか。
正道のこととなると自信がなくてつい、悪い方に考えてしまうから、相手側の不安にまで考えが及ばなかった。そういうところが子どもなんだろうな。
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