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(そんな、まさか)
「っ……比良くん!! 大丈夫!?」
冷たい廊下に横向きになって倒れ込んでいる比良の元へ柚木は慌てて駆け寄った。
早鐘のように鳴る心臓。
予想外の光景に直面して混乱しながらも、しゃがみ込んで容態を確かめた。
「柚木……か……?」
(よかった、意識ある!)
「どしたの!? おっ、お腹痛い!? 頭!? 階段から落ちたんじゃないよね!?」
「……落ちてはいない……」
返事はしたが、目を閉じたままの比良は苦しそうに顔を歪めていた。
「……ごめん、柚木……」
あたふたしていた柚木は、このタイミングで一体何を謝ってきたのだろうかと耳を疑った。
「気持ちよさそうに寝てたから、そのままにして……俺の判断力が鈍ってた……起こして、ちゃんとバスから降ろすべきだったな……」
「……比良く……」
ただならない状況下にありながら些細なことを謝罪してきた比良に、柚木は、ついつい泣きそうになった。
「比良くん、ちょっと待ってて、先生呼んでくる!!」
当然、泣いている暇などない。
二階にある職員室へ急いで向かおうとした。
しかし、ぐったりしていたはずの比良がそれを拒んだ。
自分のそばから離れようとした柚木の腕を掴んで引き留めたのだ。
「行くな」
腕を掴まれた柚木は反射的に思う。
(う、う、腕が千切れる~~~……!)
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