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4-1-月曜日
靴を履き替えたばかりの柚木の肩から滑り落ちていったスクールバッグ。
「うひぃ……比良くん……」
自分のシューズボックス前でカチンコチンになっていた柚木の真横へ、比良は颯爽とやってきた。
「どうしてそんなにびっくりしてるんだ?」
一足先に登校し、教室にスクールバッグを置いて一階に下りてきていた比良は首を傾げる。
いつものように先に教室にいる姿を横目で確認するつもりだった柚木は、フライングをかまして目の前に現れた比良に言葉を失った。
(……朝イチの比良くん、爽やかすぎ……)
みんなと同じチェック柄のズボンなのに、やたら足が長く見える、もしかして比良くんの制服だけ特注だったりする?
朝からこんなにキラキラしてる人いる?
朝日よりも眩しいの、気のせい?
「ほら」
比良は落ちていたスクールバッグを拾い上げ、かたまっている柚木に渡した。
「ああ、金曜日にあんなことがあったから、もしかして休むと思ったのか?」
「ッ……そ、そうそう、金曜ね、遠足の後に……って、あれ……比良くん、その手……そのまんま……?」
自分が巻いて不恰好な仕上がりのままになっている包帯に柚木はぎょっとする。
「うん」
「包帯変えてないの、衛生上よくないと思うよ!?」
生徒の往来が偶々途絶えた二年生のスペース。
シューズボックス越しに上級生や下級生の笑い声が聞こえてくる中、比良は包帯が巻かれた手を片手で包み込んだ。
「柚木がせっかく巻いてくれたから」
(……眩しすぎて目が焦げそう……)
比良くん、土日は大丈夫だったのかな。
マストのこと、家族に報告したのかな。
学校に来て大丈夫なんだろうか?
でも、報告していたら病院で検査とかあるだろうし、そもそも学校どころじゃないはずだ。
(もしかして誰にも言ってない……?)
「マストのことは家族にも、まだ誰にも言っていないんだ」
(……もしかして比良くん、おれの心読んでる……?)
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