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「ぅ……ぅ……っ……ぷはっ……ぁっ……」
呼吸まで奪いそうなほど激しかったキスは終わりを迎える。
密着していた比良の唇が離れ、透明な糸が連なって、うっすら目を開けていた柚木は今更ながら猛烈に恥ずかしくなった。
「げほっ……ぅ……ぅぅ……っ」
「柚木、泣いてるのか……?」
情けなく呻吟していたら。
鼓膜にそっと届いた声。
宙に浮いていた両足がゆっくりと踊り場に着地する。
一思いに荒らされた口元が長い指に丁寧に拭われた。
「泣かないで」
「……今の比良くんは、いつもの比良くん、ですか?」
「ああ」
目には多少赤みが残っていたが。
柚木は心底ほっとした。
「俺、柚木に無理やりキスしたのか?」
「えーと……その……」
「ごめん」
言葉を濁せば遣り切れなさそうに謝られ、申し訳なくなって首を左右にブンブン振った。
「おれは平気!! 泣いてないし!! 大丈夫!!」
(意味もなく大切にとっておいた初キスは喪失しましたけどね)
「このポスターも俺が破ったのか?」
「えっ……これは……あ~~……」
ビリビリになったポスターを前にして比良と向かい合っていた柚木は。
「貴方達、授業中にこんなところで何をしているの!」
とうとう教師に見つかり、台風キスの真っ最中じゃなくてよかったと、一人肝を冷やした……。
昼休みになった。
(ほんとに比良くんとキスしちゃったんだな)
友達と一緒に教室でお弁当を食べる柚木は、食堂で昼食をとる比良のことばかり考えて心ここにあらず、だった。
「それにしてもさ、ユズくんらしいというか」
「途中でユズくんの方が具合悪くなって、よろけて掲示板のポスター破ったとか、比良クンに逆に保健室まで付き添ってもらったとか、なんだかなー」
柚木がついた嘘は全員にすんなり丸呑みにされた。
踊り場で出くわした教師も、文武両道で生活態度が真面目な優踏生の比良がいたこともあって、保健室へ行くのをすんなり許可してくれた。
『ここは後で自分が片づけます』
『比良君、貴方はいいのよ、早く保健室へ行ってきなさい?』
(先生からも無条件で信頼されている比良くん)
そんな比良くんと……烏滸 がましいことにキスなんぞを……マストだったとはいえ……なんて罰当たりなおれ……。
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