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「ぅぅっ……ぅ~~……っ……!?」
いつ噛みつかれるか気が気じゃなく、なけなしの抵抗を試みようとした柚木は、口内に指を突っ込まれて硬直した。
(比良くんの大事な指!!)
去年、全国大会で優秀な成績を残した弓道部が地元のニュース番組に取り上げられたことがあった。
弓を引く比良の凛然たる袴姿にどれだけの人間が魅了されたことか。
弓道の上達において重要な<手の内>を習得している、その手。
噛みつけるわけがない。
(比良くん、おれ、どうしたらいい?)
今は眠りについている<比良くん>に心の中で柚木は問いかけた。
(比良くんのためなら何でもするって誓ったけれど、さすがに、これは)
弓を引く際の繊細な感覚が刻み込まれている指を口にし、かたまっていた柚木に、比良はさらに大胆な行為に出た。
か細い両手首を捕らえていた手がTシャツの内側に潜り込んでくる。
お腹や脇腹を撫で、薄い胸まで弄 って、肌身を直に這い回った。
「ぅ~~……っ」
指三本を咥え込まされている柚木は呻吟した。
上半身を撫でられている間も、うなじを舐め啜られ、明らかに興奮している股間を押しつけられて目を白黒させた。
(やっぱり二重人格になったとしか思えない)
好き勝手に肌を辿る掌。
うなじから離れようとしない執着深い唇。
(これは比良くんじゃない)
「ぅ」
露骨に硬さを増していく熱源に柚木の頬は上気する。
(おれだって<サルベーション>を接種してる、ヒートになったことは一回もない、それなのに)
ケダモノみたいな比良くんに頭がぼんやりしてくる。
おれまで発情期になっちゃいそうだ。
「ん……っ」
柚木は口内に居座る指に吸いついた。
歯を立てないために止む無くしたことだった。
「俺の指、おいしいのか」
うなじに熱烈に構いっぱなしの比良に問いかけられると、体の奥底がジンジンした。
居場所に迷っていた舌端を抓られたら、新たに唾液が溢れ、目立たない喉仏をヒクヒクと震わせた。
「このまま噛みつきたい」
「!!」
「いっそのこと噛み千切りたい」
「うーーーー……!?」
(噛み千切られたら出血多量で死ぬ!!)
そんなことさせられないし、番にだってさせちゃだめだ、比良くんに甚大な迷惑がかかる!
「ううううう!」
「は……赤ちゃんみたいだな……」
ぬるりと引き抜かれていった指。
だらしなく濡れていた口元がさらに濡れた。
「うう……それだけは……だめ……」
柚木は赤い目をした比良に肩越しに希 った。
「それだけは、絶対、やめて」
ドアにへばりついて外へ逃げたそうにしているオメガ男子に、猛烈に盛りのついたアルファは言う。
「他は何してもいいってことか」
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