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7-1-空き教室

駆け足で過ぎ去っていったゴールデンウィーク。 五月下旬には中間テストを控え、生徒たちは眠気と格闘しながら連休明けの授業に挑んでいた。 「ふわぁ……」 眠気に負けそうになっていた柚木は休み時間に入ると真っ先に欠伸をした。 「やるよ、ユズ」 「もがっ!?」 欠伸真っ最中の口の中に一口サイズのお菓子を谷から放り込まれ、目を白黒させる。 「サーターアンダギー、うまいだろ」 「ごほっ……ほとんど丸呑みにしたけど、おいしかった……かな」 谷とは連休の前半にごはんに行った。 ベータの友達とも集まって遊んだし、それなりに連休を謳歌した。 頭の片隅には常に比良の影がちらついていたが。 (今日、比良くんは学校を休んでる) 沖縄旅行のお土産を喉に詰まらせかけた柚木は、ペットボトルのお茶をゴクゴク飲みながら窓際の空席を見つめた。 (連休中、やっと家族に伝えることができたかな) 比良は連休を迎えるまでマストになったことを柚木以外の誰にも口外していなかった。 幸いにもまだ守り通されている秘密。 四月半ば、昼休みに視聴覚室で……あの後、授業開始までギリギリねばって廊下へこっそり出、特にアクシデントもなく教室へ戻っていた。 『ここ……視聴覚室か?』 『うん、予鈴が鳴ったら教室に戻ろう、比良くん』 『……柚木、どうしてそんな隅っこにいるんだ?』 あれから連休が始まるまで。 柚木はマストになった比良の対応にしばしば追われた。 危惧していた通り、どんどんエスカレートしていった彼の行為。 うなじと本番は死守しているが、いつバクリとやられるか……。 (おれに保健委員と性処理係の兼任は荷が重すぎた) でも、もう、これで解決したはず。 比良くんの家族がマストに対してちゃんとした処置をしてくれるはず。 (二人だけの秘密じゃなくなるのは、ちょっとさみしい) でも、そんなの天秤にかけるまでもない。 とにかく比良くんが傷つかないで安心できるようになってくれたら、うん、それでいい。 翌日。 「おはよう、柚木」 学校に登校してみれば教室に比良がいた。 いつにもまして仰々しいアルファの輪からすっと離れた彼に声をかけられて、柚木は思う。 (……これ、家族に言ってないやつだ、まだ二人だけの秘密のまんまだ……)

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