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いつもと変わらず賑やかな朝の教室。
「柚木、ゴールデンウィークはどこかに出かけたのか?」
ただし生徒たちの視線は一ヶ所に偏りがちだった。
「えーと、うん、近場ばっかりだけど」
「? どうして立ったんだ?」
「えーと、比良くんが立ってるので」
「柚木が立つ必要はない」
空いている近くのイスに座ろうとせず、誰かさんのように机に腰掛けることもせず、背筋をピンと伸ばして横に立つ比良に柚木は申し訳なくなる。
「おれのイスに座る?」
(それもそれで申し訳ないな、おれ如きのイスに比良くんを座らせるなんて不届き千万ってやつなんじゃあ)
座ったり立ったり、落ち着きなくおろおろしている柚木に比良は小首を傾げた。
「こうしたら落ち着くか?」
そう言ってその場にしゃがむ。
両膝に両肘を緩くつけ、凛々しく澄んだ眼差しで柚木を見上げてきた。
「身長差があるし、柚木からしたらこっちの方が喋りやすいかな」
(ひーーーーー……!!)
澄んでるっ澄んでるっ、清々しい風吹いてるっ、存在自体がもう五月晴れ!!
そもそも比良くんは五月の申し子みたいなものだし。
この間が誕生日だったんだ。
五月四日のみどりの日。
ちなみにおうし座のA型。
(ぜんぶ又聞きで知ったおれ、又聞きの才能あるかもしれない)
「近場って、どこに行ったんだ?」
「あっ、イ●ンのイートインでだらだらしたり、友達の家でだらだらしたり……」
(……なんてしょーもない連休の過ごし方……)
「谷とも会ったりしたのか」
まだ教室に姿を現していない谷のことを聞かれて柚木はきょとんとした。
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