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「谷くんとは食べ放題に行ったよ。おれがエビ天ばっかり食べてたら、同じモンばっかり食べるなってキレられた」
「楽しかったか?」
「うーん、たまにごはん行くけど、お互い馴染んじゃって、楽しいっていうよりも和むっていうか。ウチにいるみたいな空気になる」
「そうなのか」
「比良くんはさ、昨日、どうして休んだの? もしかして……」
「昨日は体調が悪くて休んだ、それだけだ」
セーターを着用していなかった比良はスクールシャツの袖を捲り上げた。
血管の浮き出る筋張った腕を出すと、ふと膝を抱いて、ポツリと呟く。
「俺とは遊ばなかったな」
(そんな恐れ多いことできるかーーー!!)
柚木は思わず脳内で激しくツッコミを入れた。
そして脳内ツッコミといえども烏滸 がましかったと反省して「おれ、比良くんの連絡先、知らないから……」と、もっともらしい言い訳を述べておいた。
担任が教室に入ってきた。
比良は窓際の席へ去り、プレゼントを渡し損ねた彼の取り巻きからは険しい視線を食らい、柚木は気づかないフリに徹した。
(比良くん、意地でも学校に来るつもりなんだろうか、何がそこまで比良くんを駆り立てるんだろ)
比良がマストを起こして一ヶ月近く経つ。
同じようにマストになった有名人のブログをチェックしてみれば、半数の者が医療機関に通院や入院をしていた。
それは必然的に長期化する。
何せ処置の手立てがないから。
(比良くん、多分、今週もマストになる)
真っ直ぐに伸びた比良の背中を視界の隅っこで窺った後、柚木は俯き、ひっそりと頬を赤らめた。
(不安なのに、心配なのに)
二人だけの秘密が守られたこと、不謹慎にも、また嬉しく思ってしまった。
(ごめん、比良くん)
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