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帰りの挨拶が終了した直後、比良の様子はおかしくなった。
誕生日を祝おうとしていたアルファの同級生を先に下校させ、廊下で蹲りそうになっていた比良に柚木は慌てて肩を貸し、別棟の空き教室へと移動した……。
「……柚木……?」
西日色のカーテンをぼんやり眺めていた柚木は、はたと下を向く。
性なる欲を発散させて<マストくん>が満足すると、今日、彼の体は本当の眠りに落ちた。
置き去りにするわけにもいかずに寄り添い、程なくして<比良くん>が目を覚まし、柚木は胸を撫で下ろす。
「比良くん、大丈夫? 具合悪くない?」
「いや、俺は……柚木は……」
「おれは平気」
最近、柚木はポケットティッシュやウェットティッシュを持ち歩くようにしていた。
いろいろ後始末をし、恐縮しながら比良の服装も最低限整えて、眠れる彼に膝を貸していた。
「これって……膝枕か……?」
(最高に居心地の悪い膝枕でごめんなさい)
それから何回か寝顔を盗み見しました、許してください!
写真に撮るのは寸でのところで踏み止まりました!
「じゃあ、おれもう帰るね」
頭を起こした比良に柚木は告げる。
「あんまりむりしないで、比良くん」
「柚木……もう行くのか?」
「じゃあ、また明日」
膝の痺れを堪えて立ち上がり、五時過ぎ、夕暮れが近づいて肌寒くなってきた空き教室を後にしようとした。
「行かないで」
比良は自分のそばから離れようとした柚木の手を掴んで引き留めた。
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