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「決別する」 イスの高さが合わず、長い足を持て余して前屈みになっている比良にあたふたと焦点を合わせた。 「け、決別って……でも、友達なんだし、別に今まで通りでもいいんじゃないかな……」 比良はまた首を左右に振った。 「今まで彼らの思想にまで干渉しようとは思わなかった。ものの考え方や捉え方は人それぞれだ。自分と違うからと、撥ねつけたり邪険にしようとは思わなかった」 「ふ……ふむふむ……?」 「今日の言動は許されたものじゃない」 「……」 「あのときは自分の怒りを抑え込むので精一杯だった。それに俺の母もオメガだ。説明したことがないから、ほとんどの人間は把握していないだろうが……ただただ侮辱でしかなかった」 昼休みの廊下で我関せずと始終背中を向け、素っ気なく去っていった比良が、まさかそこまで強烈な怒りを覚えていたなんて。 知る由もなかった柚木は驚いた。 (まるっきり他人事扱いされてなくてよかった) そして、余所余所しかった態度の裏で彼の感情が大きく動いていたことに、ちょっとだけホッとした。 「……柚木に近づいたら、そばにいたら、また……」 比良は深く項垂れる。 「支離滅裂だ」 「え?」 「こんなに混乱するのは初めてだ」 「比良くん、急にどしたの……?」 (あのさ、比良くん) 『俺も見習わなきゃな』 あれって、どういう意味だったのでしょーか。

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