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(比良くん、まさかウチでマストに) 「ッ、もしかして……マストになっちゃいました……?」 柚木の問いかけに比良は答えない。 代わりにフードの下に覗くうなじに唇を。 「う」 聖域に落とされたキスの感触に柚木は一瞬で涙ぐんだ。 水気を含んでいつになく瑞々しい肌を、ちゅっと吸われる。 筋張った両腕に胸元をきつく締めつけられながら、とことん弱いうなじをやんわり啄まれる。 「ふ……っ……それ、くすぐったい……」 柚木は身を捩じらせて前のめりになった。 すかさず追ってきた唇に再び口づけられ、そっと甘噛みされると、甘ったるい戦慄に心臓を鷲掴みにされた。 「かっ……噛むなぁ、絶対……噛んじゃだめ……」 <マストくん>に対する口調で注意すれば両腕にさらに力がこもった。 息苦しくなるほどのバックハグ。 雨に濡れて冷えていたはずの体が熱を帯びていく。 「苦し……っ……アナコンダかっ、おれの体絞め殺す気かっ、こんなん窒息する~~……!」 <比良くん>にだらしない部屋着をお披露目して募らせていた羞恥心はどこへやら、柚木は恥ずかしげもなく情けなく喚いた。 「人んちで勝手にマストになるなっ……」 一向に緩められない腕の輪の中でジタバタし、振り返って<マストくん>を睨もうとしたら。 不意に解けた抱擁。 息つく間もなくタオルで目元を覆われる。 (え!?) 巻きつけられて速やかに目隠しされるなり、ベッドへ押し倒された。

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