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ギシ……ッ 二人分の重みで軋んだベッド。 「な……何しちゃってんだよぉ……目隠しなんて卑怯でしょーが……」 視界を遮られ、両手首をシーツに縫い止められた柚木は弱々しげに非難する。 「離せってば……むかつくんですけど……この狂犬猛犬やろー……」 サイズにゆとりのある服が乱れ、首筋や鎖骨が露となり、ぺたんこなお腹まで外気に覗いた。 「んーーーー……っ……う……動かな……」 力を振り絞って起き上がろうとしたものの、両手首を捕らえる手はビクともせず。 すぐ真上に迫る気配をひしひしと感じる。 息遣いも、一心に注がれる視線も、増していく興奮も、互いの僅かな隙間伝いに嫌というほど感じた。 「ッ……目隠しとかドSかっ、マストくんの変態変態変態変態っ……ど変態のどすけべっ……」 悪口を連発していた唇が不意に塞がれた。 (くさむら)に潜んで獲物を狙う獣さながらに姿勢を低くした彼にキスされた。 直に伝わってきた微熱。 隙間を完全になくして触れ合い、微弱な震えまで共有する。 タオルの下で柚木は律儀にぎゅっと目を閉じた。 <比良くん>を取り戻すために<マストくん>の性なる欲を解放させなければならない。 放棄するはずだった性処理係としての役目を自ら担い、怖々と口を開いていく。 ただ重なっていただけのキスをより深くするように、その唇を差し出した。 「……?……」 普段の<マストくん>ならば口を開く前に傍若無人に舌を突っ込んでくるというのに、不自然な間が生じて、柚木は戸惑う。 (……まさかおれから来いってこと……?) まだ、じっとしている唇。 意地悪なマストくんの性悪な戯れと捉えた柚木は、半ば破れかぶれに、意趣返しも込めて……彼の下唇にかぷっと噛みついた。 「ッ……」 (あれっ) 予想外のリアクションに柚木は素直にびっくりした。 あっさりと遠ざかった微熱。 中断されたキスに拍子抜けした。 (……なんか……変だ……)

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