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「入院中、柚木にずっと会いたかった。柚木と話がしたかった。も肌身離さず持っていた」 「お守り……?」 まだ枕に顔を突っ込んで表情を隠している柚木に比良は頷いてみせた。 離れ難く、自分よりも華奢な体に未練がましく覆い被さったまま話を続けた。 「マストになったら。この手で柚木をまた傷つけてしまったら。そう思うと怖くて目も合わせられなかった。離れるべきだと自分に言い聞かせて、距離をおこうとした」 リアルタイムでほんのり赤くなっていく耳たぶに見惚れた。 シャツの下に覗くぺたんこなお腹にジリジリと胸底を焦がした。 「でもやっぱり見つめたくなった」 ビクリと痙攣した細い肩を無性に抱きたくなった。 「母にも止められた、でも我慢できなくてこの家までやってきた、でも、もしも、また……」 「比良くん」 胸の動悸が苦しくて柚木は深呼吸がてら彼の名を呼んだ。 防衛本能でもはたらいたみたいに、もっともっと丸くなって、力いっぱい枕をぎゅっした。 「帰ろうとしたら柚木が俺を迎えにきてくれた。そして思ったんだ。離れたくないって。そばにいてほしいって。柚木が別の誰かのものになるなんて絶対に嫌だって」 普段の理路整然とした口調とは違う、強い感情に揺らめく声色は柚木の心臓(ハート)を直撃した。 そばにいたい。 傷つけてしまうかもしれない。 離れるべきだ。 そんな葛藤や苦悩を支離滅裂だと嘆いて人知れず混乱していた比良は……柚木の肩に額を押しつけた。 「柚木と一緒にいたい」 (いい加減、心臓が止まりそうなんですが) キャパオーバーとはこのことか。 別格のアルファから許容範囲を超えた身に余る想いを告げられて柚木はてんぱった。 いちいち言わなくてもいいことをポロリと口にした。 「おれは、そんな……マストくんの性処理係のつもりで……」 (あ) こんな言葉、比良くんは受け付けないかも、軽蔑されるかも……。 どぱっと冷や汗をかいた柚木の不安を余所に、一呼吸の間をおいて、比良は真摯に告げる。 「俺も柚木の性処理係になりたい」 (ぶほぉっっっ)

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